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青色申告特別控除が令和9年分から変わる:75万円控除の新設と65万円の新要件
個人事業主やフリーランスが所得税を抑えるうえで、いちばん効果が大きい制度のひとつが「青色申告特別控除」です。令和8年度税制改正で、この控除は令和9年分(2027年分)の所得から大きく変わります。この記事では、いまの制度と改正後の制度を並べて整理し、今年のうちに何を準備すればよいかをまとめます。
青色申告とは
青色申告は、一定の帳簿をつけて申告する人に税金上の特典を認める制度です。事業所得・不動産所得・山林所得がある人が対象で、使うには税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を出しておく必要があります。
- 提出期限(原則):青色申告をしたい年の3月15日まで
- その年の1月16日以後に開業した場合:開業日から2か月以内
主な特典は、この記事で扱う特別控除のほか、家族に払う給与を経費にできる「青色事業専従者給与」、赤字を翌年以後3年間繰り越せる「純損失の繰越し」などがあります。
令和8年分(2026年分)までの控除額
いま(令和8年分の申告まで)の控除額は、帳簿のつけ方と申告の方法で3段階に分かれています。
| 控除額 | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付して期限内に申告。さらに「e-Taxで申告」または「優良な電子帳簿で保存」のどちらか |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、決算書を添付して期限内に申告(紙の提出でも可) |
| 10万円 | 簡易な簿記(単式簿記)でも可 |
令和9年分(2027年分)からの控除額
令和8年度税制改正で、控除額の区分が次のように変わります。国税庁の資料では、前々年分の収入金額が1,000万円を超えるかどうかでも扱いが分かれています。
| 帳簿・申告の方法 | 前々年の収入 1,000万円以下 | 前々年の収入 1,000万円超 |
|---|---|---|
| 簡易な簿記 | 10万円 | 0円(控除なし) |
| 複式簿記 + e-Tax | 65万円 | 65万円 |
| 上記 + 優良な電子帳簿 | 75万円 | 75万円 |
ポイントは3つです。
- 最大75万円の控除が新設されます。複式簿記・e-Taxに加えて、請求書データとの自動連携や訂正削除履歴の記録など、一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」で保存することが条件です。
- 65万円控除にはe-Taxが必須になります。いまは「e-Tax」か「優良な電子帳簿」のどちらかで65万円を受けられますが、改正後はe-Taxでの申告が前提です。紙で提出すると65万円・75万円の控除は受けられません。
- 売上規模が大きい簡易簿記の人は控除がなくなります。前々年の収入金額が1,000万円を超えていて簡易な簿記で記帳している場合、10万円控除の対象から外れます。
不動産所得の場合、事業的規模であれば上の表と同じ考え方ですが、業務的規模の人は改正前と同様に最大10万円の控除です(国税庁資料より)。
いくら違うのか:ざっくり試算
控除が10万円増えると、課税される所得が10万円減ります。所得税の税率が10%の人なら所得税が約1万円、それに住民税(約10%)の分も減るので、合わせて約2万円前後の差になります(復興特別所得税などは考慮していない概算です)。65万円控除と10万円控除の差55万円なら、同じ条件で約11万円前後の差です。
実際の税額は、ほかの所得や所得控除によって変わります。ここでの数字は制度の大きさをつかむための目安です。
今年のうちにやっておきたい準備
- 複式簿記に切り替える。会計ソフトを使えば、日付・金額・科目を入れるだけで仕訳帳と総勘定元帳が自動で作られます。
- e-Taxで申告できる環境をつくる。マイナンバーカードとスマートフォン(またはICカードリーダー)があれば、確定申告書等作成コーナーからe-Taxで送信できます。
- 75万円を狙うなら、優良な電子帳簿の要件を満たすソフトを選ぶ。訂正・削除の履歴が残ることなどが求められるため、国税庁の資料や、ソフト側の対応状況(JIIMA認証など)を確認しておきましょう。
- 令和9年1月1日から要件を満たした記帳を始める。控除は1年分の帳簿に対してかかるので、年の途中から切り替えるより、年初から整えておくほうが確実です。
よくある質問
- 令和8年分(2027年3月に出す申告)から新しい控除になりますか?
- いいえ。令和8年分までは現行の65万円・55万円・10万円です。75万円控除などの新しい区分は、令和9年分(2028年に出す申告)から適用されます。
- 白色申告から青色申告に切り替えるには?
- 税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を出します。令和9年分から青色申告にしたい場合、原則は令和9年3月15日まで、1月16日以後に開業した場合は開業から2か月以内が期限です。e-Taxでも提出できます。
- 副業の雑所得でも青色申告特別控除は使えますか?
- 使えません。青色申告の対象は事業所得・不動産所得・山林所得です。副業が事業として営まれていて事業所得にあたる場合に限り、青色申告ができます。
- 期限を過ぎてから申告したらどうなりますか?
- 現行制度では、65万円・55万円の控除は期限内申告が要件なので、期限後の申告だと控除は最大10万円になります。申告期限の3月15日を必ず守りましょう。
- e-Taxはスマートフォンだけでできますか?
- マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンがあれば、国税庁の確定申告書等作成コーナーからe-Taxで送信できます。パソコンとICカードリーダーを使う方法もあります。
まとめ
- 令和8年分までは、今までどおり65万円・55万円・10万円の3段階。
- 令和9年分からは、75万円(優良な電子帳簿)・65万円(e-Tax必須)・10万円(簡易簿記、1,000万円超は0円)に変わる。
- いちばん確実な準備は、会計ソフトで複式簿記を始め、e-Taxで申告できるようにしておくこと。