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個人事業主の経費の判断基準と「家事按分」の考え方
「これは経費にできますか?」は、個人事業主からいちばんよく聞かれる質問です。答えを出すための考え方はひとつだけで、その支出が事業の収入を得るために必要かどうかです。この記事では、判断の基準と、自宅で仕事をする人に欠かせない「家事按分」の考え方を具体例で説明します。
必要経費の基本ルール
所得税法では、必要経費を「収入を得るために直接必要な売上原価や販売費・管理費その他の費用」としています。代表的なものは次のとおりです。
| 勘定科目 | 例 |
|---|---|
| 仕入高・外注費 | 商品の仕入れ、デザインや開発の外注 |
| 地代家賃 | 事務所・倉庫の家賃、駐車場代 |
| 通信費 | インターネット回線、スマートフォン、サーバー代 |
| 旅費交通費 | 打ち合わせへの電車代、出張の宿泊費 |
| 消耗品費 | 文房具、少額のパソコン周辺機器 |
| 減価償却費 | パソコン・車など長く使う資産の取得費を分けて計上 |
| 支払手数料 | 振込手数料、決済サービスの手数料、会計ソフトの利用料 |
経費にならないもの
- 生活費:自分の食事代、私服、プライベートの旅行など
- 所得税・住民税:事業主本人にかかる税金は経費になりません(事業税・固定資産税の事業分などは経費になります)
- 罰金・延滞税など
- 事業主本人への給料:個人事業では「事業主貸」として扱い、経費にはなりません
家事按分とは
自宅を事務所にしている、私用のスマートフォンで仕事の連絡もしている、というように、ひとつの支出に事業用と私用が混ざっているものを「家事関連費」と呼びます。
家事関連費は原則として経費になりませんが、国税庁は「業務の遂行上必要である部分を明らかに区分することができる場合」、その部分は必要経費になるとしています(所得税法第45条、所得税法施行令第96条)。この区分の作業が「家事按分」です。
按分の基準の例
| 支出 | 按分の基準 | 計算例 |
|---|---|---|
| 家賃 | 仕事に使っている床面積の割合 | 60㎡のうち仕事部屋が15㎡ → 25% |
| 電気代 | 仕事で使う時間やコンセントの割合 | 1日の使用時間のうち仕事が8時間 → 約33% |
| スマートフォン | 通話履歴やデータ通信の仕事の割合 | 通話の半分が取引先 → 50% |
| 車(ガソリン・保険・減価償却) | 走行距離のうち仕事で走った割合 | 年間1万kmのうち4,000km → 40% |
大切なのは、なぜその割合にしたのかを説明できることです。間取り図、業務日誌、走行記録など、根拠になるものを残しておきましょう。割合を毎年ばらばらに変えるのではなく、状況が変わらない限り同じ基準を使い続けるのが基本です。
記帳のしかた
家賃月10万円、事業割合25%の場合、支払った時点で全額を記録し、年末に私用分を振り替える方法がわかりやすいです。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 毎月の支払時 | 地代家賃 100,000 | 普通預金 100,000 |
| 年末の按分(12か月分) | 事業主貸 900,000 | 地代家賃 900,000 |
年間120万円のうち75%(90万円)を事業主貸に振り替えるので、経費として残るのは30万円です。
迷いやすい支出
- カフェ代:作業場所として使った飲み物代は、仕事のためと説明できれば経費にする人もいます。打ち合わせなら会議費です。
- 書籍・セミナー:業務に関係する内容なら新聞図書費・研修費として経費になります。
- パソコン:10万円以上のものは原則として減価償却します。中小事業者の少額減価償却資産の特例(青色申告者が対象)は、令和8年度税制改正で対象が40万円未満(年間合計300万円まで)に広がったと中小企業庁が案内しています。適用時期と要件は最新の資料で確認してください。
記録と証拠の残し方
- 領収書・レシートは、日付・金額・支払先・内容がわかる形で保存する
- メールやウェブで受け取った請求書・領収書は、電子データのまま保存する必要がある(電子取引データの保存ルール)
- 按分の割合の根拠(間取り図や走行記録)もいっしょに残す
よくある質問
- 領収書をなくしてしまったら経費にできませんか?
- 支払いの事実がわかる記録があれば、あきらめる必要はありません。クレジットカードの利用明細や振込記録、出金伝票(日付・支払先・金額・内容を記入)を残しておきましょう。
- 開業前に買ったパソコンや名刺代は?
- 開業準備のために使った費用は「開業費」として計上できます。開業費は繰延資産として、開業後に任意のタイミングで償却できます。
- 家族に払った給料は経費になりますか?
- 青色申告なら、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を出したうえで、届け出た範囲内の妥当な給与を経費にできます。白色申告の場合は、専従者控除という別の仕組みがあります。
- 按分の割合に上限はありますか?
- 法律で決まった上限はありません。実際の使用状況に合った割合であることと、その根拠を説明できることが大切です。
まとめ
- 経費になるかどうかは「事業の収入を得るために必要か」で判断する。
- 事業用と私用が混ざる支出は、合理的な基準で按分すれば、事業分を経費にできる。
- 割合の根拠を説明できる記録を残し、同じ基準を続けて使う。